留学は手段であって、目的ではない
シェアブロードの幹部から、留学後のことを書いてくださいと言われました。なので40年前に横浜の純ジャパのサッカー少年がなぜアメリカの大学に行くことになったのかということではなく、卒業後の人生経験を踏まえて、最近留学中の方々と話をしている内容の一部をお伝えします。
Who is 足立淳一郎?
東京出身。横浜の県立高校を卒業し、グルーバンクロフト基金の奨学金を得てイリノイ州Knox大学へ進学(サッカー部主将、経済専攻)。卒業後日本で仕事(アメックス)してからノースウエスタン大学ビジネススクール。米国シカゴにて医療メーカー・電機メーカー・不動産開発投資の勤務を経て1993年に独立。日米間の企業誘致・資金調達に関するコンサルテイング。現在グルーバンクロフト基金の理事などの立場を通じて、100人以上の在米日本人留学生の相談相手。尊敬するのは椎名林檎と明石家さんま。シカゴ在住。
留学したら自分だけでなく家族の人生も変った
アメリカに来る日本人以外留学生にとって大学進学は、日本人の移民、そして母国にいる家族の移民を目的にしている人も多いです。それだけアメリカに移民することはことは魅力だということです。
私はそういう目的はありませんでしたが、結果的に卒業後30年以上住むことになりました。おかげで両親も10何度か来ています。あれほど中国に関心のなかった、おばあちゃんも、孫が北京でサマースクールに行くとなると、行ってみようかしら、ということになります。親戚、友人にしても、知人が海外にいると世界が身近に感じられるわけです。私の娘はNYでビールのマーケテイングの仕事、息子は大学でわけのわからぬ物理の勉強していますが、おかげで我々は未知の世界にどんどんひっぱられます。
つまり、一人が留学をするということは、本人だけでなく、家族、友人、後輩に大きな影響があるということです。これは当時は考えもしなかったことです。
(1978年 Knoxサッカーチーム。前列唯一のアジア人が筆者)
なでしこが優勝したらパスが来るようになった
家族だけではありません。例えばこういうことがありました。8年前女子ワールドカップでなでしこが優勝しました。そしたらどうなったか。
当時所属していた草サッカーチームの仲間から「日本人もサッカーできるんだね」と見られるようになり、今までパスもしてくれなかったメキシコ人からパスが来るようになりました。世界で注目されるということは本人、家族だけでなく日本人全体に影響が出てくるんです。ブラジル人であるということだけでサッカーでは一目おかれるように。今大阪選手や久保選手のおかげで日本人テニス・サッカー選手は得しているわけです。
ボスキャリ(だけ)で人生を決めないで
留学中の学生との相談のテーマで一番のトピックは進路です。(ちなみに2番目は恋愛・人間関係)これは明治以来日本社会の大きなテーマです。せっかく貴重な経験をしてきた学生が日本の社会で十分なじめない、評価されていないというのは現実だと思います。
日本の企業に就職をめざす多くの学生はボスキャリ(留学経験者を対象として就職イベント)を頼りにしています。5000人の(自称バイリンガル)学生が集まり、200社の(大手)企業から内定獲得しようとするイベントです。
でも、ちょっと考えてみてください。このイベントに参加する学生の過半数は短期留学をした日本の大学生です。アメリカの大学に4年間在学するのと半年在学するのでは全然経験が違いますよね。採用側の人とも話しますが、アメリカの大学事情、どういう環境なのか、知っている人はほとんどいません。4年間で世界中から人種、文化、宗教、価値観の異なる学生と共同生活をすることで得られる体験を理解していません。そして学生側も、そのスキルを説明できません。もったいない。
せっかく視野を広めるためにリスクをとって渡米したのに、日本で進学した友人と同じ就活をするって矛盾してませんか。さらにこのイベントに出展する企業は大企業を中心とした(たった)200社です。
視野を広げた学生が、就職に関してはわざと視野を狭くしてませんか。親が知っている日本の企業に就職することは果たして成功でしょうか。もっと対象を広げてください。このイベントにはたまたま参加していなくても、皆さんのような人材を欲しがっているところはたくさんあります。ただ皆さんの存在を知らないんです。学生にとって就職活動は大変ですが、同じように採用も大変な作業なんです。
ファーストクラスのチケットでエコノミーにすわる?
せっかく日本の大学でできない経験を積んだ皆さんがボスキャリのリストで自分の将来を決めるのをみていると、ファーストクラスのチケットでエコノミーで席をとりあっているような印象があります。
では、どうすればいいのでしょう。プリンストンのキャリアサービスによると、キャンパスに訪問する企業の数は減少しているそうです。スーツを着てキャンパスインタビューをへて、会社を訪問して、という昔の活動から、もっとカジュアルなネットワーキングタイプを勧めていると聞きました。
紹介を通じて先輩の職場を訪問したり、多くのインターンシップを通じて、業界・企業・職種の人脈、知識を4年間かけて蓄積せよ、ということです。プリンストンでさえ、これが実態。ヘッドハンターに言わせると、ネットで公募される求人は実際の半分以下。求人の過半数はネットには存在しないということです。学生にとってもっともやりがいのある環境は大企業ではなく、中小企業であるというコメントもありました。同感です。
ボスキャリにも来ない、ネットにも出てこない企業情報をどうして見つけるのか。それがネットワーキングの力です。自分がどういう職種、インターンを探しているのかを常に「つぶやく」ことで想いげないところから紹介がもらえます。(これは後でもう少しく詳しく書きます)皆さんを助けたい人は結構いるんです。それは大学のアドバイザーかもしれないし、卒業生メンターかもしれないし、ルームメートの両親かもしれない。大学にはいろいろなメンター制度があると思いますが、それを利用する人はだいたい5%。だからそれだけで目立ちます。
今アメリカでは採用難ですから、特にシリコンバレーなどでは採用に際して、社員の紹介が優先されます。採用につながると社員にもボーナスが出たりします。ネットを通じない作業は非効率だと思うかもしれませんが、逆にそこにチャンスがあります。
でもネットワーキングの前に、まずやらなければいけないことがあります。自分が何をしようとしているのか、それを言葉にすることです。(続く)
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