今年から大学生になる皆さん、合格&入学おめでとうございます!新しい生活に向けて夢と希望で心が満たされていることでしょう。海外大学に進学される方はちょうど、進学先が決まったところだと思います。
海外大学は勉強が大変だとよく言われているのですが、この勉強というのは単位を取ることだけではありません。実は、人気の専攻はそもそも専攻できるようになるのも大変なのです。
キャンパス内で自殺、この1年だけで3件
先日、トロント大学の学生にとってショッキングなニュースが入ってきました。U of T acknowledges death at Bahen Centre, police deem incident non-suspicious
Non-suspiciousということは事件性がないということなので、一言で言ってしまえば自殺です。自殺が起きた建物には献花台が備えられました(冒頭の写真)。
このBahen Centreというのはコンピューター・サイエンスとエンジニアリング向けの建物なので、亡くなった学生はおそらくいずれかの専攻(を目指していた)と考えられます。
しかも、この1年でキャンパス内での自殺は3件目で、うちBahen Centreで起きたのが2件目ということなので、相当悲惨です。亡くなった方々にはご冥福をお祈りいたします。
大学合格後からが地獄
こうした痛ましい出来事が起こる背景の一つとして、大学入学後の選抜があります。日本で言えば東大の進振りみたいなものです。
海外の大学も日本と同じように人気の専攻、不人気の専攻があります。北米で人気の専攻といえば、コンピューター・サイエンス、ビジネス、心理学、看護学、エンジニアリングといったところでしょうか。
一部の大学では、これらの専攻に人数制限を設け、大学での成績を元に学生を選抜しています。以下では筆者の大学(トロント大学)のコンピューター・サイエンス専攻を例に話をしていきたいと思います。
トロント大学の文理学部の1年生には専攻がありません。代わりに、streamと呼ばれる学問分野的なもので分かれています(東大でいう文科一類、…、理科三類と似たようなもの)。
専攻は2年生に上がるときに決めますが、ここで問題が生じます。人気の専攻は定員を大幅に超える志願者が殺到します。本当は志願者を全員受け入れるのが望ましいのですが、あまりに学生が多すぎると後々の教育に支障が出てしまいます。
そこで、大学側は大学の成績で上位の生徒だけがそれらの専攻ができるようにするのです。となると、学生はなんとかして上位に食い込もうと必死に勉強するため、選抜基準がインフレしていきます。
トロント大学のコンピューター・サイエンス専攻は2つの入門授業の成績を選抜に使うのですが、昨年の合格最低成績はコンピューター・サイエンスのstreamで83%(A-相当)、それ以外は86%(A相当)でした。
残念ながら落ちてしまった方々はどうするのかというと、入門の授業を再履修して良い成績を収めるか、あきらめて別の専攻にする(この場合は受けられるコンピューター・サイエンスの授業に上限がある)か、他校舎(トロント大学は分校が2つあり、それらはメインキャンパスより水準が低い)・他大学に編入するかをします。
これだけ厳しい条件だと、学生たちはお互いを共に学ぶ仲間ではなく、席を奪い合う敵としてみなすようになってきます。そして、一部の学生は耐えられなくなり、精神に異常をきたしてしまうのです。
出願時に専攻を決めないと不利!?
大学入学後の競争が過熱してしまったために、大学側が1年生のアドミッションポリシーを変えるというケースが出てきました。
縁があって、Twitter上でワシントン大学(シアトル)の学生さんと少々絡む機会があったので紹介しますが、ワシントン大学は今年から、2年生が終わってからコンピューター・サイエンス学部に入る生徒の枠を大幅に減らし、代わりに入学時から直接その学部に入れる生徒の枠を増やすことになりました。
まだ今年の統計が出ていないのでなんともいえませんが、プログラミング等の経験が高校生の時点でないと、ワシントン大学でコンピューター・サイエンスを勉強できなくなるといった批判も出ているようです。
さいごに
海外大学は入るのが難しくて卒業するのが難しいという話はよくあるのですが、専攻によっては、入学後に選抜があるゆえに、希望の専攻で卒業するのが難しいという側面もあるのです。
実は現地の学生も、こうした仕組みを知らずにトロント大学に来てしまうケースが多々あり、入学してから後悔したという話をしばしば聞きます。
特定の専攻がしたいという強い思いがあるなら、合格通知を受け取った際にはどの専攻で合格したのかを確認しましょう(特に総合大学の場合)。例えば、専攻がPre-〇〇とあった場合には入学後の熾烈な競争が待ち構えている可能性があります。
その競争を勝ち抜く自信があるなら問題ないのですが、トップレベルの大学に進学する際に意外と見落としやすいポイントなので、精神的に参らないためにも専攻選択のプロセスの確認は強くお勧めします。
2019/04/04 yuya
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