海外大学生に向けたアドバイス「好かれるよりもリスペクトされる人に」:50年前のアメリカ大学留学をリモートインタビュー③

こんにちは。ついに米国留学今昔PJも、最後の第3部目となりました。担当するのはCarleton College新3年のmihhyです。


最終編となる今回は、日本人というアイデンティティを持つ留学生としてアメリカの大学で4年間過ごした当時の様子、またその4年間を通して自身の中で変化したこと、得たこと、そしてそれらが卒業後のキャリアにどう影響したのか前田さんに伺いました。


時代を超えてアメリカの大学がどう変わったのかについて当時アメリカに留学していた方へのインタビューを通じて考察しようという本プロジェクト。最後に本PJの締めということで、進路に悩む高校生や大学生に向けたメッセージもいただきました。それでは、もう少々このインタビューにお付き合いください。第1部第2部はそれぞれこちら。


目次:

  • 日本への意識が高まった四年間
  • 大学で何を得たかは、後でじわじわ分かってくる
  • あなたの人生は、18歳でピークを打ってよいのですか?
  • 編集者の声


<前田 正吾さんの経歴>

静岡県出身。藤枝東高校卒業後、グルーバンクロフト基金奨学生としてWesleyan Universityへ進学、経済学を専攻(Class of 79)。大学卒業直後、Columbia Universityの大学院へ進学し国際関係学で修士を取得。その後、野村グループ、ゴールドマンサックス、シュローダーなどで金融のキャリア(ファンドマネジャー)を持つ。現在はグルーバンクロフト基金業務執行理事を務める。


日本への意識が高まった四年間

留学するということは、自分の価値観とは異なる価値観を持つ人と学び、そのような環境に身を置くということです。そこで生まれる会話や場面の中で時にはとてつもない衝撃を受け、傷つき、時には新たな自己を発見するのです。前田さんに、”日本人”というアイデンティティを持つ留学生として過ごしたアメリカの大学での生活について伺いました。


Q. 当時、大学関係の方たちからは日本人としてどのようなイメージを持たれていたと思いますか。また、それを通して学んだことは何だと思いますか。

 そもそも、普通のアメリカ人に他国や外国人に対する興味がないように見えましたし、とにかく珍しいが先頭にあった気がしますね。また、友人や教授などの言動から、日本に対するステレオタイプがあることに気がつきましたね。


 現代の日本に関する関心が急激に高まったのは、1980年ぐらいだと思いますね。源氏物語とか、そういう昔のこと言われたりとかはありましたけど。今までは想像もしていなかった日本のイメージを突きつけられて衝撃的でした。(特に当時の古い世代の方の間では、)原爆がきっかけで良い国家になったんだぞ、という意識が強い印象がありましたね。日本に対するファシズムの印象とかもありました。


Q. アメリカの大学で過ごしたからこそ、日本について初めて気がついたことは何だと思いますか。

 ウェズリアンで日本の文化をよく学んだという気持ちもしますね。日本の映画をゆっくりちゃんと観れたのはWesleyanに来てからなんですよね。僕が育ったころは日本の映画っていうのは完全に衰退していて、もう怪獣映画か漫画がほとんどでした。比較的小さい規模の大学にしては日本に関する授業が多かったので、大学のその姿勢や興味のある子が結構いて、日本人学生として非常に嬉しかったですね。


Q. ”日本”に対するご自身の気持ちに変化などはありましたか。

 日本に対する意識が出てきましたね。自分も当初どうしてアメリカで日本のことを考えるんだと思っていたけども、前よりも日本が好きになりました。アメリカに来て、自分が知らなかった日本の良さをアメリカ人を通して知りましたね。アメリカで日本人が活躍していることを知ると嬉しかったです。同時に、「外国人のレンズを通して見た」日本のものを評価する傾向が日本にはあるなとも気がつきましたね。自国の良さを自分たちでもっと理解して、発信できるようになればいいなと思います。


大学で何を得たかは、後でじわじわ分かってくる

アメリカのリベラルアーツ大学で学ぶということはどういうことなのか。その四年間を終えた時、どのような姿になっているのがリベラルアーツ教育というものなのか。卒業後自身のキャリアを築き上げてきた前田さんだからこそ分かる、アメリカの大学での4年間とは何か伺いました。

1979年大学の卒業式にて(前田さんの友人撮影)

Q. ご自分がマジョリティである日本の大学ではなく、マイノリティとなるアメリカの大学に来て得られた、考え方や視点は何だと思いますか。

 特に日本人は、小さい頃から教え込まれていることを正しいと思いがちだと思います。なので、アメリカでの四年間が、違う視点、気づきを与えてくれたと感じますね。常識とか既存の秩序、ルールに疑問を持つという心持ちが、アメリカに行ってさらに磨きがかかったように思います。むしろ、疑問を呈することがいいことだと考えるようになりました。


Q. アメリカのリベラルアーツ大学で良かったと思うことはありますか。

 リベラルアーツ、その中でもResidential Liberal Arts教育の、クラス外の寮生活等を通しても学べる形式が良いなと思いますね。やはり対面でしかできないことがあるので。あとは、アメリカの大学のシステム的な柔軟さは特別だと思います。学部、ひいては文系理系の決定を高校生に強いるのは相当難しい。アメリカだと、本気で勉強したければいろいろなところに突っ込めるから良いと思います。


Q.(今の海外大生の間で大学で学んだことと就職に一貫性をどう持たせるか悩んでいる人が多いのですが、)アメリカでの四年間は前田さんの卒業後のキャリアにどう影響したと思いますか。

 正直、4年間どんな意味があったのか卒業後すぐには分からなかったです。後からじわじわわかってきました。振り返ると、成長できる経験を得られたのは留学のおかげかなと思いますね。せっかく日本からアメリカに出たのだから前例にとらわれないことをやってみようとか、ルールをぶっ壊していこうということを以前よりも強く思いましたし、行動に移す姿勢が強まったと思います。また、日本はここがおかしいという視点を、よりクリアに持てるようになりました。それは日本だけでなく、いろんなことに対してですが。やはり「物事の本質を見る」力は大きかったと思います。仕事においても、知識的には関係ないけど、本質を見極めて相手を説得することなど、大学でトレーニングされた部分は生きました。


Q. アメリカの大学進学を検討している高校生にメッセージはありますか。

 コモンアップエッセイを書いたり、自分の comfortable zoneを出て挑戦してほしいですね。成果というものはすぐには感じないかもしれないけれども、10年、20年経ってから、留学での自分の経験が一気に繋がるようになりました。基本的には、物事の本質とは何かということを考える癖がついたと思います。そういうことはどんな職業についても、いい仕事をするためには必要です。物事の本質を磨く心づもりは大事ですね。別にアメリカじゃなくてもいいと思うんですよ。留学で成長できる経験があると思います。


あなたの人生は、18歳でピークを打ってよいのですか?

大学は人生のほんの通過点であり、キャリアは模索しながら築き上げていくものです。模索し続けながら自分なりの道を切り開いてきた、という前田さん。アメリカの大学を卒業し自身のキャリアを築く経験を経た前田さんだから伝えられる、進路に悩む高校生・大学生に向けたメッセージをもって、3部に渡る本特別企画記事を締めようと思います。


Q. 高校生や大学生に、進路選択に関するメッセージはありますか。

 ”〇〇大学に受かりました。”という塾の広告などを新聞の一面で春先によく見たりしますが、「あなたの人生は18歳でピークを打っていいんですか?」と問いかけたくなりますね。それ以降の人生の方が長いんだから。常に100%を出す必要はないです。70%で続けて、必要なところで120%出せば丁度いいと思うのですよ。


Q. 特に海外の大学で学ぶ大学生に心得ていて欲しいことはありますか。

 日本人としてのプライドを持って生きていってほしいですね。日本人は英語を喋る人間に対して引け目を感じたり、卑屈な感じになってしまうことがよくあると思います。でも、英語は喋るためのツール。プライドを持った謙虚さを持って対応することが大切だと思うのです。日本人の奥ゆかしさである、”being modest”を変な意味で使わないでほしいですね。黙ってしまったり引っ込み思案になるのではなく、謙虚ながらもしたたかに挑戦する心を忘れないでほしいです。


Q. 就職に関するアドバイスなどありますか。

 日本では、就職というより”就社”するイメージが大きいように感じます。つまり、”会社に入る”みたいなコンセプトが多いですが、自分がやりたいことをするために会社に入るということが大切なのではないかな。年収とかいろいろ気になってしまいますが、一番こだわるべきは、その会社に尊敬できる人がいるかなどではないかと思います。また、自分について言いたいことを3つくらい作っておくといいですよ。いろんな質問が来ても最終着地点がその3つのどれかになるようにすれば印象に残りますし、キャリアにも一貫性が生まれてくると思います。


編集者の声

編集者一同でひときわ大きいため息を漏らした前田さんの言葉があります。


”好かれるよりもリスペクトされる人に”


この言葉、本編のタイトルとしても採用しました。アメリカの大学で1年以上学び過ごしてきた私たちにはとても心にしみる一言でした。そしてこの言葉に、前田さんはこう続けました。


”人からの信頼を勝ち取るには、上辺で繕うよりも弱みをさらけ出して、常に相手と対等な立場で対応することが重要だと思いますね。”


留学は楽しいことの反面、つらいことも沢山あります。特に慣れない環境、人との人間関係で悩んだりすることが多いです。例えば、つい相手の英語を聞き取れなくても、適当に話を合わせたりしてしまったり。ですが、この前田さんの言葉でとても勇気づけられましたし、これまでの、そしてこれからの自分の行動を考えるきっかけとなりました。

それぞれがインタビューで印象に残ったこと

Natsumi:

"日本人としてのプライドを持って生きていってほしい"

前田さんが仰っていたこの言葉は私自身が大学一年目が終わるころからずっと感じている部分と重なりました。純ジャパの私が初めてアメリカに来て自分の振る舞いを振り返った時に、自分の文化に自信を持つこと。変にへこへこすることなくフレンドーリーに。芯があって自分の考えを持ち、そして礼儀を持って人と接することが出来るような自分になりたいと思った記憶があります。今回のインタビューの中で前田さんのこの日本人としてという言葉はとても印象に残りました。


Sari:

Affirmative Actionの妥当性については、インタビュー内でも活発な議論が繰り広げられたことも関係し、心に深く残りました。UC Berkeleyなどの大学では大学内での人種構成に気を配るよりも、SATなどのテストスコアや学校の成績のみで合否を判定しているそうです。どちらがより平等な入学システムなのか、考えるきっかけに繋がりました。また、わたしの大学では多様性をアピールする一方で、カフェテリアでは同じ人種や、国籍同士で固まっている風景がよく見かけられます。せっかくAffirmative Actionによって今まで出会ったことのないバックグラウンドを持つ生徒と交流できる機会なのですから、生徒一人一人も積極的に様々な人間と関わろうという姿勢を持つことができれば、Affirmative Actionの存在意義を高めることができるのではないかと感じました。


Miyuki:

今回のインタビューでは、かつてアメリカの大学で奮闘した日本人留学生に直接お話を伺うというOral Historyの延長のようなことができ、とても感謝しています。歴史書には残らないような、でも確かにそこにあったある人の営みをみなさんに共有できたことは、歴史専攻者の私にとってはとても意義のあることでした。ありがとうございました。


またインタビューには、私たちにとって大学という場は何であるか、大学に限らずどのようなメンタリティで生きていくべきかのヒントが散りばめられていたと思います。大学卒業後のことやら様々なことで頭がいっぱいになりがちな今日この頃でしたが、”物事の本質を見極める姿勢”や”自分の軸を持ち”ぶれないものを見つけて自分なりに育んでいく、という留学においての目的を再度確認できました。頭をクリアにし、今回学んだことや気がついたことを自分の中に落とし込んで今後に生かそうと思います。


ここまで三編に渡り読んでくださったみなさん、お疲れさまでした!今回の記事の感想をお待ちしております!


シェアブロードは今後もみなさんに人生の糧となるような記事を書いてまいります。では、また次の記事でお会いしましょう!


2020/8/31 mihhy

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