リベラルアーツカレッジと総合大学の両方に在籍したので比較してみた Part 3 〜誤解されがちなこと編〜

家の近くにある遊歩道の写真をiPhoneで加工してみた図。

 

こんにちは。ベロイト大学からトロント大学に編入してから2年が経とうとしている、yuyaです。リベラルアーツカレッジ(以下LAC)と総合大学の比較記事もいよいよ最後の第三弾になりました(前回前々回の記事)。今回はLACと総合大学を比較する際に誤解されがちなことを述べていきます。


目次:

  • LAC=文系大学ではない
  • 総合大学でも2科目専攻できるし、入学時に専攻を決める必要ない
  • LACでも卒論が書けるレベルの専門性はつけられる
  • LACでも講義中心の授業はあるし、総合大学でも少人数の授業はある
  • 日本人の多さ
  • 実際に払う授業料はむしろLACの方が安い?
  • さいごに


注:この記事はLACの基礎的な情報を知っている読者を対象にしています。LACについて何も知らない方は「リベラルアールカレッジとは」でググってから戻ってきてください。


LAC=文系大学ではない

まず声を大にして言いたいのは、LACは決していわゆる文系のための大学ではないということです。LACでも理系の専攻は十分にできますし、中にはHarvey Mudd Collegeのように工学系のLACも存在します。


筆者自身もベロイト大学でコンピューター・サイエンスを専攻していましたし、コンピューター・サイエンスと数学と物理の3つを専攻している友人もいました。ちなみに、ベロイト大学は今年からデータサイエンス専攻も始めるそうです。


そもそもリベラルアーツの元々の由来は文法学、修辞学、論理学、算術、幾何、文学、音楽で構成される自由七科のことですから、人文学に限らず社会科学や自然科学も内包しています。ですので、自分は理系だからといってLACを最初から候補から除外するのは少々先走り過ぎです。


総合大学でも2科目専攻できるし、入学時に専攻を決める必要ない

LACの長所としてダブルメジャー、すなわち2科目専攻ができることが挙げられているのをちらほら見かけるのですが、総合大学でも普通にできます。というよりむしろダブルメジャーやマイナー(副専攻)が推奨されています。


実際にトロント大学の文理学部(エンジニアリング等の専門学部に行かない学生が行く学部)の卒業要件の一つはスペシャリスト(メジャーをもう少し掘り下げたもの)1つかメジャー2つかメジャー1つにマイナー2つのいずれかを取ることです。


また、同じくトロント大学の文理学部に1年生として出願する際には、専攻の代わりにadmission categoryなるものを選択して出願します。これは東大で言う科類のようなもので、だいたいこんな分野に興味あるなー程度の枠組みです。1年生は各々のadmission categoryに属しつつ興味のある分野を幅広く学び、2年時に進級する際に専攻を決めます(これも東大の進振りと似ていますね)。


正直なところ、大学に入ってしまいさえすればそのあとは割となんでもできます笑。例えば社会科学のカテゴリーを選んだからといって、必ずしも社会科学の中から専攻を選ばないといけないというわけでもなく、理系の専攻にしてもいいですし、カテゴリー毎の必修科目はないので社会科学の科目を1つも取らずに卒業することもできます。


LACでも卒論が書けるレベルの専門性はつけられる

リベラルアーツを日本の大学に当てはめると教養となるのですが(訳の正確さはさておき)、教養学部には「広く浅く」のイメージはありませんか?その延長でLACも広く浅く勉強する場所と思われることもあるのですが、LACでの学びは広くはあっても言うほど浅くはありません。


専攻によっては卒論が必須ですし、たとえ必須でなくても卒論のオプションはつけられます。ベロイト大学で、筆者の先輩に政治学を専攻している方がいたのですが、政治学は卒論が必須でしたので、何十ページに及ぶ論文を書いていました。ただしLAC特有のデメリットとして、教授の数が少ないために卒論のテーマの幅が狭いということがあります。


ちなみに、基本的にLACにはリベラルアーツ専攻はありません。どのLACでも3年時に進級する際には自分の興味のある学術分野を最低1つ選んで専攻にするか、特別な許可を得て自分でカリキュラムを作らなければなりません。


逆にリベラルアーツ専攻(正確に言うとliberal studies)のある大学は総合大学というなんとも皮肉な笑(リベラルアーツを学びたかったら総合大学に!)。総合大学でもリベラルアーツ教育に力を入れているということです。トロント大学も例外ではなく、専攻以外の必修授業は0なので、LAC並みの履修自由度があります。さらに、自ら専攻を作るself-designed programsという仕組みも存在します。


LACでも講義中心の授業はあるし、総合大学でも少人数の授業はある

当然です。過度に一般化するのはやめてください。そもそもある程度の知識がないとディスカッションで話すことはできないですし、上級レベルの授業内容が理解できなくなります。また、総合大学でも少人数でディスカッション中心の授業はあります(こちらの記事も参照)。


ベロイト大学で筆者が取った中で、講義中心だった授業は物理と経済でした。物理は1セクション30人程度で、週1でセクション別で実験があったのですが、週2の講義は全3セクション合同でした。これらの授業の雰囲気はトロント大学のそれとほぼ変わらないと思います。強いて違いをあげるなら、トロント大学の方が授業スライドのある割合が高いくらいですかね…。


一方、大規模総合大学であるトロント大学にも一年次から少人数授業は存在します。例えばこのThe One Programは1クラス約20〜30人のゼミ形式で行われます。筆者が取ったある授業の中には、1クラスに教授2人が割り当てられ、そのクラスが1ヶ月後に2等分されたのち、毎週グループごとに教授1人と学生20名未満に向けてプレゼンをするという、かなり濃密なものもありました。


日本人の多さ

簡単に言うと、数字のトリックのお話です。「日本人の少ない田舎の大学がいい」と言ってLACに行く人は割といます。するとどうなるかというと、小規模なLACに日本人が10人20人といる状況ができあがります。ベロイト大学は日本の大学3校と提携していることもあり、筆者が在籍していた頃は20人程度いました。オハイオ州のウースター大学も似たような感じみたいですね。


トロント大学は公式に統計を出してくれていて、それによると3キャンパス合計で約200名の日本人学生がいるそうです(ちなみに中国本土からは約12600人という桁違いな数字に笑)。


やっぱり総合大学の方が日本人多いやないかい!と突っ込んだあなた、少々見方を変えてみてください。LACの学生数は1000〜2000人程度です。そこに日本人が20人いるわけですから、全学生の1%は日本人となります。一方トロント大学は全体で90000人以上の学生がいるので、日本人の占める割合はたったの0.2%です。つまり、LACの方が総合大学より日本人の密度が高くなる逆転現象が生じます。筆者の体感でも、ベロイトにいた時の方が日本人と一緒に履修することは多かったように思います。


実際に払う授業料はむしろLACの方が安い?

LACの授業料はものすごく高いことで有名です。本当に良質なLACを選ぶと授業料だけで50000USDくらいはかかります。ですが、このお値段は総合大学でも私立なら普通です。


では州立の総合大学はどうかと言うと、留学生料金で40000USDを上回るところはわずかです。こうしてみると州立の総合大学の方が魅力的ですが、LACでは返済不要の奨学金をもらえる可能性が高いので実際に支払う金額はずっと低くなります。アメリカの私立大学で定価の授業料を払うのは中国人の金持ちのボンボンくらいです。他方州立大は基本的にケチなので奨学金は出ても雀の涙です。筆者は編入を経て、4年間更新可能な30000USDの奨学金から一回限りの2000CAD(≒1400USD)の奨学金へ大幅減額になりました。


つまるところ、大学のホームページに書かれている金額と実際に払う金額はLACの場合異なりますし、私立の総合大学とも遜色ないので出願するときにはさほど気にしなくてもいいのではないかと思います。


さいごに

筆者の経験をもとに、筆者が留学する前に知っておきたかった情報を全部書いたらこんなに長いシリーズができてしまいました笑。本当は留学生のサポート体制についても書きたかったのですが、筆者は全然使わなかったため書きようがありませんでした(最初にベロイト大学を選んだときはサポート欲しいとか思ってたくせに←)。


LACと総合大学の違いってどこからくるのかを突き詰めていくと、結局はほぼすべて規模の違いとネームバリューと大学院の有無に帰着するんですよね。それ以外は各々の大学のカリキュラムや教授の違いから来ているもので、LACと総合大学の違いではないです。だから大学次第で、総合大学でも専攻に関係ない科目を幅広く取れますし、LACでもこの学問を頑張ったと胸を張れるくらいに専攻の勉強はできます。


さて、最初の疑問「LACと総合大学のどちらが良いのか」に対してですが、これは自分のスタイルや好み次第なので、自己分析をしてください。例えば学習スタイルで言えば、みんなで協力しながら学習するのが好きならLACの方が合うと思いますし、負けず嫌いで割と一人でこなしてしまうなら総合大学向きだと思います(生活・就活編「競争社会か協力社会か」参照)。この比較してみたシリーズが自己分析の指針とその後の進路設計の役に立てば幸いです。


2020/4/12 yuya

シェアブロード

海外大学受験や大学生活で感じたことを、現役大学生が素直に綴ったブログのような読みやすいサイトです。海外大学を目指した理由や、今の学校を選んだ理由。自分たちが出願時に知りたかったことや、知っておきたい素敵な団体や人も紹介します。 誰かにとってのマイナスポイントは、他の誰かのプラスポイント。

0コメント

  • 1000 / 1000